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【スカイリムSE】闇の一党:訪れることのない哀悼(Mourning Never Comes)後編 ハードボイルドVer.

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 シセロと夜母が聖域に到着したことで、メンバー達に様々な反応が出ていた。

 アストリッドは、あからさまにシセロが闇の一党のやり方に口を出すことを嫌がっている。

 重苦しい空気の中、俺はアストリッドから新しい仕事の指示を受ける。

 今回の「俺」は、ハードボイルドに話を進めまするのだった。

 

 ネタバレ注意願います。

  一部グロテスクなシーンがふくまれますので、ご注意願います。

 

訪れることのない哀悼 後編

アストリッドの指示

 ナジルから指示を受けた任務「聖域」では、俺が依頼人接触することはなかった。

 だが今回のアストリッドの指示は、

  依頼人の「ムイリ」に会い、詳細を聞いて契約をし、そのまま任務を遂行してこい

 と言うものだ。

 

 俺は聖域のダイニングテーブルで隣に座ったガブリエラに話しかけた。 

俺たちが依頼人に直接会うことはあるのか? 

あなたが直接交渉?異常事態ね。いつもならアストリッド本人がやる事なのに。あなたのあらゆる能力を試そうとしているのかしら?礼儀正しく、専門家らしく、しっかりつとめなさい

 ガブリエラは皿に盛られたリーキのグリルをフォークでもてあそびながら小声で言った。

 彼女が食べ物を口にするのをこれまで見たことがない。

礼儀正しく、専門家らしく?暗殺者に礼儀正しさは必要か?

 ガブリエラに皮肉でも言おうかと思ったが、かぎ針で喉を刺されるのはごめんだ。

 俺は、暗殺の依頼をするような人物と会うことに、少しばかりの興奮を覚えながら、相棒のイニゴと二人でマルカルス行きの馬車に乗った。

 依頼人「ムイリ」と接触

 マルカルスは、銀と血で出来ていると言われている。

 何故か、この街に来るときはいつも曇天だ。

 冷たい石造りの街並みに青空は似合わない。

 

 依頼人のムイリが勤める「ハグスキュア」を訪ねると、入口に鍵がかかっていた。

ついてないな

イニゴが器用に片方だけ眉を上げ、にやついている。

時間つぶしに酒場に行ける。だから”ついている”だろ?相棒

 俺たちは街で唯一の酒場「シルバーブラッド」(この街では嫌というほど耳にする言葉だ)に入った。

 昼前と言うこともあり酒場の中は閑散としていたが、店内に染みついた鉱山労働者たちの臭いが鼻をつく。

 薄暗い店内のカウンターに一人の女が座ってグラスを傾けていた。

 「もう一杯よ、クレップル」

 「もうやめておけ、ムイリ。飲み過ぎだ」

 「いいから、はやく持ってきて!」

 俺とイニゴは同時に顔を見合わせ、肩をすぼめた。

聞いたか?

あぁ・・・・・・。ついてないな

 イニゴは小声でそう言うと、小さく首を振りながら店の暗がりへ滑るように消えていった。

 マスターのクレップルも、カウンターの女も、イニゴが店に入ったことすら気づいていないようだ。

 

 俺は、ゆっくりと”礼儀正しく”カウンターの女の方へ向かった。

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 明らかに飲み過ぎの女は、父親に怒られた子どものような顔をしてグラスに注がれた酒をじっと見ていた。 

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ムイリだな?闇の一党だ

 緩慢な動きで俺を見返したその女の目は、ひどい哀しみに残りの人生を全て塗り尽くされた者に特有のものだった。

来てくれたのね。アライン・デュフォンを犬のように殺して

詳しく聞こう

 俺はムイリの横のスツールに座り、クレップルに彼女と同じものを頼んだ。

 シロディールブランデーがカウンターに置かれる。

 熟成された樽の香りはイニゴまで届いているだろうか?

ウィンドヘルムの連続殺人のことは知っているかしら?

あぁ。つい先日もキャンドルハース・ホールのスザンナが殺された

スザンナ・・・・・・。皮肉なものね。私はキャンドルハース・ホールによほど嫌われているのかしら

どういう意味だ?

あの事件で殺されたフリガとは友人だったの

シャッター・シールド家の娘か?

そうよ。姉妹のように仲が良かったの。フリガの死の哀しみを紛らわせたくて、キャンドルハース・ホールでお酒を飲んでいたの。そこに現れたのがアラインよ

何者なんだ?そのアラインと言うのは

ハンサムで優しい男よ。私の悲しみと痛みをぬぐい去ってくれたわ

ムイリのグラスを持つ手に力が入るのがわかった。

俺は黙ってムイリの言葉を待つことにした。

時間はいくらでもある。

相棒がしびれを切らさない限りは。

あなたは人の痛みがわかるタイプの人なのね

どうかな。自分ではわからない

ムイリがグラスを静かにカウンターに置いて話し始めた。

アラインは山賊よ。カットスロートって一味のリーダー。後で知ったのよ

山賊がどうしてウィンドヘルムの酒場に居たんだ?

あいつは、フリガが殺されたことを聞いて街に来たのよ。あの薄汚い男は、哀しみに暮れるシャッター・シールド家を助けるふりをしてお金を巻き上げたのよ

お前は、利用されたのか

ムイリは驚いた顔で俺を見た。

口惜しさと憎しみの入り混じった目から涙があふれ始める。

シャッター・シールド家の者があなたと同じように思ってくれたら良かったのに。その通りよ、アラインはシャッター・シールド家に取り入るために私に近づいたの

それが理由なんだな

そうよ。私の人生を奪った償いをさせて、必ず

もう一つの依頼

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 俺はムイリからアラインの居場所を聞き出した。

 アラインが率いる山賊「カットスロート」のアジトは、ウィンドヘルム近くのドワーフの廃墟「ラルドサール」にあると言う。

 これ以上必要な情報はなく、あったとしても耳に入れたくはなかった。

 余計な情報は任務遂行に支障をきたす。

 俺はクレップルに目配せをし、席を立とうとした。

待って

ムイリの言葉に俺は嫌な予感を覚えた。

暗がりのイニゴから、全身の毛が逆立つ気配が感じ取られた。

「そのまま立ち去れ、相棒」

そう言っているかのようだ。

俺の予感は当たった。

もう一人・・・・・・。殺して欲しいの

・・・聞くだけ聞こうか

ムイリは決して俺と目を合わせようとはしなかった。

アラインの時とは明らかに様子が違っている。

ニルシン・シャッター・シールドを殺って

俺はブランデーを口に含み、一息ついてから聞き返した。

ニルシンの死を望む理由を聞かせてくれ

私は・・・・・・。トヴァの娘のような、ニルシンとフリガの姉妹のような存在だったの。それなのに彼らは私の無実を信じようとしなかった。私をゴミのように扱って捨てたの

理由になるとは思えない

ムイリに俺の言葉は届いていないようだった。

殺人依頼という自分の行動を正当化させたい強い思念が、ムイリの周りに濃い霧のように渦巻いているように見えた。

ニルシンが死ねば、トヴァは彼女を失ったと実感するでしょ?もしかしたら、私が娘のような存在だったと気づくかもしれない

もし気づかなかったら?

ムイリの目から狂気が消え、底なし沼のような深く暗い哀しみが顔を出した。

自分の涙におぼれてしまえばいい

俺はカウンターに勘定を置き、何も言わずに席を立った。

わずかな音も立てずにイニゴが近づいてくる。

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 俺とイニゴはウィンドヘルム行きの馬車に揺られながら、今回の”2つ”の依頼について話続けた。

 

標的:アライン・デュフォン

 ドワーフの廃墟「ラルドサール」は、アンガの工場から北西の山間部にあった。

 俺とイニゴは寒さに震えながら雪山を走り、かつての栄華をうかがわせるドワーフの廃墟を目指した。

 

 周りの手下どもを誘き出して全滅させた俺とイニゴは、一人残った標的に背後から偲び寄った。

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 「犬のように殺して」

 ムイリの言葉が、あの時の感情と共に鮮明に心を揺さぶる。

 俺の獲物「ElvenDagger」には、ムイリから預かった猛毒「ロータス・エクストラ」が塗られていた。

 狂暴な色に染まった刃に、ムイリの想いを乗せて。

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 アラインの身体がロータス・エクストラの毒で緑色に染まる。

 人の哀しみにつけ込み、ムイリの人生を奪った男にふさわしい最期だ。

 俺とイニゴはアラインの死体を横目に、焚き火で暖を取った。

 お互い考えていることは同じだった。

”もう一つ”はどうする?

 イニゴが先に切り出した。

決めていない。が、どうにも気が進まない

標的に会ってから決めても遅くないだろ

あぁ、俺もそう考えていた

シャッター・シールド家がムイリに対してどんな感情を抱いているのかが知りたいんだろ?

お前の悪いところは、人の心まで盗み見るところだ

標的:ニルシン・シャッター・シールド

 ウィンドヘルムに戻った俺たちは、買い物客でにぎわう市場の中で標的を発見した。

 標的に近づく俺の横にイニゴが静かに近寄る。

ここは人目がある

ここでは殺らない。話すだけだ

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ニルシンだな?ムイリに頼まれた、彼女は非常に不幸なんだ・・・・・・。

ムイリですって?あの陰口ばかり言ってる娼婦?

ムイリがアレインと共犯だと思っているのか?

あの女を私の家族が信用するわけないでしょ!

そうか

あの女は死人よ!そう伝えて!

俺の脳裏に、薄暗い酒場のカウンターで自分への罰であるかのように酒を飲み続けるムイリの姿が浮かんだ。

ムイリはあんたに言われなくても、もう、死人のようだ

俺の手は無意識のうちにダガーを握りしめていた。

イニゴが俺とニルシンの間に立ち、険しい目で俺に目配せをして、ニルシンから距離を取らせた。

殺るかと思ったぜ

すまなかった

どうするんだ?あの様子じゃ、ムイリとシャッター・シールド家の仲は戻りそうにないぞ

イニゴ、ムイリの言葉を覚えているか?

あぁ。”ニルシンが死ねば、トヴァは私が娘のような存在だったと気づくかもしれない”だったな

ムイリは、ただ気づいて欲しいだけなんじゃないのか?自分がどれだけシャッター・シールド家の人々を大切に思っていたのかを

自分で殺すことを考えたが、怖気づいたとも言っていたよな

哀しみなんだ。ムイリの感情は憎しみじゃない。哀しみだ

 住人で賑わうウィンドヘルム市場の中で、俺とイニゴは居場所を見失っていた。

 歪んでいた、何もかもが。

 自分の感情に押し流されそうになった時、イニゴの言葉が俺を救った。

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ここは夢が潰える場所だ。必要以上にここに長く留まらないようにしよう

 周りの時間がふいにゆっくりと流れ、歪みが消えた。

 俺は目の前の青毛のカジートの目を見返して言った。

あぁ、その通りだ。アストリッドに報告を済ませたらシーポイントに帰ろう

イニゴはネコ科の細い眼をいっそう細くして嬉しそうに言った。

うまい魚に、うまい酒が待ちくたびれているぞ!

俺たちは人混みの中に消えていくニルシンの背中を見送り、城門へと足を早めた。

この街に入る時の重たい足取りは、市場に置いたままに。

夢が潰えない明日を 

 聖域へと戻った俺は、アストリッドに任務完了の報告をした。

任務を完了してきた

戻ったのね。初めての本格的な任務はどうだった?少しはやりがいがあったんじゃないかしら?

あぁ、上手くいった、と思う。彼女は他にも殺しを頼んできたが・・・、それは我々の仕事ではないと判断した

いいでしょう。あなたの意思を尊重するわ

 アストリッドは、さすがに闇の一党を率いるリーダーだった。

 俺の葛藤をお見通しのようだ。

 俺は自分でも気づかなかった背中のこわばりが溶けていくのを感じた。

 闇の一党に居心地の良さを感じ始めている自分を受け入れようとしている。

もう一度、ムイリに会ってきなさい。あなたはまた成長するわ 

わかった。マルカルスはウィンドヘルムよりはましだからな

 アストリッドは一瞬首を傾げたが、すぐに優しい笑みを浮かべながらつけくわえた。

戻ったら私のところに来て。あなたの手を借りたいの、今度は少し個人的なことでね

人使いの荒いリーダーだな

上手い魚と酒を楽しみにしているイニゴへの言い訳を考えながら俺は言った。

悪いわね、どうしてもあなたじゃなきゃダメなことなの

 アストリッドの真剣な顔に一抹の不安を覚えながら、俺は聖域を後にした。

 マルカルスでムイリの姿を見かけた俺に迷いはなかった。 

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それで、どうなったの?アラインは?

アライン・デュフォンは死んだ

ムイリの目に一瞬哀しみの色が写ったのを俺は見逃さなかった。

・・当然の報いね。ニルシンはまだ生きてると聞いたわ。彼女は殺さないことにしたの?正直・・・失望したわ

ムイリの顔はまるで陶器の仮面のように無感情に見えた。

ムイリ、憎しみと哀しみが違うことに本当は気づいているんじゃないのか?

マルカルスの無機質な石畳に、ムイリの仮面が落ちて砕けた音が聞こえた気がした。

ありがとう・・・・・・。あなたが私の依頼担当で良かった。お礼を言わせて・・・・・、わたしの”問題”を解決してくれたことに

 俺はイニゴを連れて、始まりの場所「シルバーブラッド」へ向かった。

 アストリッドを少し待たせても、相棒と酒を酌み交わしたかった。

 マルカルスの空に、抜けるような青空が広がっていた。

 「「なんだ、意外と似合うじゃないか。」」

 俺とイニゴは同時に同じ言葉を吐き出し、笑いながら酒場へ向かった。

 

おまけ

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